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クレーム処理について


 最近せち辛い世の中になっているせいか,各種クレーム処理について相談を受けることが多いですので,今回はクレーム処理について投稿させていただきます。

 そもそも「クレーム」とは英語では「単に権利を主張すること」と訳されますが,日本ではいわゆる「苦情」として受け取られること,特に消費者サイドが会社や公共団体などに対して言う苦情,と取られることが多いのが実情です。
 もちろん,苦情,が正当な内容であれば,苦情を受けた側もそれ相応の対応をするべきなのは当然のことで,これを後述する「狭い意味でのクレーマー」として,相手にせず処理してしまうべきではありません。当方の姿勢を疑われますし,相手方の感情等をこじらせて,紛争を複雑,長期化させることになりかねないためです。
 ただ最近多いのは,相手方の要求に法律上の理由が全くないにもかかわらず,単にクレームをつける,といういわゆる「狭い意味でのクレーマー」です。特にその傾向は地方に行けば行くほど多くなります(例えば滝川市の生活保護費に関する事件などが好例でしょう)。
 その理由は,東京等の都会であれば,クレーマー対策マニュアルがある,担当の部署がある,などそれ相応の対策をしているのですが,小さなコミュニティで過ごしてきた地方では,そのような苦情対応に慣れておらず,また相談するべき相手も少ないため,その種の苦情に負けて不当な主張を認めてしまう,という傾向があるためです。またその種の「クレーマー」の苦情は,手を変え品を変え,様々な方法でなされることや,担当者が一方的に責められることから,担当者が鬱病等になることも少なくありません。
 従って今後増えていく「狭い意味でのクレーマー」に対し,どのように対処していくか,ということは,どの団体,個人においても考えていく必要のある課題かと思われます。

 ただ先ほど説明したように「正当な権利主張」をクレーム扱いしては活動が成り立ちませんし,かえってトラブルを複雑化させることになりかねません。そして「正当な権利」か否かは,最終的には裁判等で決められるものですので,その場で「絶対にこれはクレーマーだ」とは断定できないのが一般です。
 また「狭い意味でのクレーマー」も様々なものがあり,例えば暴力団関係者による不当要求のような典型的なクレーマーもあれば,単に感情的になっていて,人の言うことを聞かず,暴走してしまうタイプ,というのもあります。
 そのためその場その場で「狭い意味でのクレーマー」か否かを見分けるのはなかなか困難なのですが,一応私の経験上,「狭い意味のクレーマー」の傾向をいくつか挙げてみようと思います。 

1.要求が曖昧である。例えば暴力団関係者がいう「誠意を示せ」という言葉などが挙げられます。法的に何らかの要求ができるようなら,「損害賠償として・・」という言葉になるのが通常でしょう。
2.素性不明の第三者を介在させる,人権擁護のような団体の名前を使う等の場合。例えば「暴力団の人間を二人行かせるからな」「某人権団体に話して貰うことにする」「東京の弁護士に相談したら・・」等々です。弁護士以外の「代理人」が交渉を行うのは弁護士法に違反する可能性が高いと思われます。また弁護士に依頼・相談するのは正当な権利ですが,その場合法律に従った紛争の解決が期待できますので,それを待って対処すればいいでしょう。
3.執拗であること,もしくは迷惑をかけることを行うこと(例えば窓口に居座る)など担当者に心理的圧迫を加えることを行う。このような対応をされると対応した担当者が圧力を受け,トラブル回避のためついつい要求を受け入れてしまうことがありますが,これは「狭い意味でのクレーマー」の典型的手口です。
4.事情を知らない他の部署に話を持ち込むなど,事情を分からない人を巻き込む。事情を知らない人が一方的に話を聞けば,通常その人に同情するものです。それを利用して不当な要求をする,と言う手口も結構ありがちです。
5.法的な主張と道義的な責任をまぜこぜにする,揚げ足を取る,自分では文書を書かないが相手にだけは要求するなど,の傾向が挙げられます。

 その他様々なポイントがあるのですが,もし上記のような傾向がありましたら,「狭い意味でのクレーマー」ということを疑ってみても良いのではないかと思います。もちろん適正なクレームには応じなければなりませんし,あからさまにクレーマー扱いするのはかえって紛争を大きくすることに繋がるので避けないといけないのですが,「狭い意味でのクレーマー」の要求に一度応じると,かさにかかって更に強い要求を持ち出すことがあります。
 もし「狭い意味でのクレーマー」と疑われるような事情があった場合,弁護士に相談することをお勧めします。

 では,その対策は?という点ですが,文章が長くなったので,また次回(近く更新予定です。)。

弁護士:笠原 裕治
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