先日STVで生活保護制度の特集があったことや,お笑い芸人の河本さんの母親の件についてマスコミが取り上げたことなどから,生活保護制度の話題が結構出てきておりますので,今回は生活保護制度について。 生活保護は,憲法25条に定める生存権の確保のため,国が生活に困窮する国民のために生活を保障することを目的とします(生活保護法1条)。ただ生活保護は,他に利用しうる資産,能力その他のものを活用することを要件とし,あくまで補足的に行われるものです(同4条1項)。また他に扶養義務者による扶養が可能な場合などは,それを優先して行うものとされています(同4条2項・先ほどの河本さんの事案などはそれに当たります。)。申請があった場合,先ほどの補足性の要件の他,保護を要する状態にあるか否かなどについて福祉事務所が調査し,14日以内に申請を受理するか応答をしなければなりません。 ところで以前日弁連で行った生活保護110番で出た苦情の大半は,福祉事務所の対応についてでした。多かった内容は,「扶養義務者に援助して貰いなさい」「所持金がなくなってから来なさい」などであり,またSTVの特集にあったように,生活保護を申請させないようにするという案件もあったと聞いております(これは生活保護法により,申請があれば14日以内に回答する義務を負うためと思われます。)。 もちろんこれらの対応は違法なものが多いのが実情です。例えば「扶養義務者に援助して貰いなさい」という点について,厚生労働省は,民法上扶養義務を負う直系血族等でなくても「過去に・・扶養を受けるなど特別の事情があり,かつ扶養能力があると推測される者」として「相対的扶養義務者」とするとの通達を出しています。しかしかかる者が民法上扶養義務を負わない以上,扶養義務の対象とならないことは明らかです。従って前記発言における「扶養義務者」が「相対的扶養義務者」であるのなら,完全に違法と言えるでしょう。 ただだからといって一概に福祉事務所の対応窓口だけを責めるのはいかがかと思われます。というのは,数年前にあった滝川市の生活保護受給問題など,生活保護費の不正受給に関する問題があるためです。そのため福祉事務所の側としては,当然これらの不正受給に対応するため,法令に基づいた相応の審査を当然にしなければなりません。その上長期的,かつ構造的な不況により,生活保護の申請自体が増加しているのに対し,これを審査する福祉事務所の職員は増加しているとは言えません。私も生活保護のケースワーカーと話すことが何度もありましたが,いずれの職員もどう見てもあり得ないほどの件数を抱えていて,苦労している様子が伺えました。 更に言うのであれば,前記した厚生労働省の通達などからも推測されるとおり,自治体より,むしろ厚生労働省が生活保護費の支出を抑えるように指導している形跡すらあります。その場合現場の福祉事務所は予算上の問題も考えないといけないのです。 もちろん先ほど述べたように,生活保護の要件を充足しているのに,これを言いくるめるような対応をする,若しくは申請をさせないと言うことは違法であり,解決しなければいけない問題で,憲法上の権利である以上予算云々は理由になりません。個別具体的事案によっては,弁護士に相談して生活保護の申請の代理をして貰うのも一つの選択肢でしょう。 ただ最も根本にあるのは,法律に基づいた審査を十分に行うことができない状態を放置し,かつ十分な予算を確保していないという状態にあるのではないでしょうか。
先日STVで生活保護制度の特集があったことや,お笑い芸人の河本さんの母親の件についてマスコミが取り上げたことなどから,生活保護制度の話題が結構出てきておりますので,今回は生活保護制度について。
生活保護は,憲法25条に定める生存権の確保のため,国が生活に困窮する国民のために生活を保障することを目的とします(生活保護法1条)。ただ生活保護は,他に利用しうる資産,能力その他のものを活用することを要件とし,あくまで補足的に行われるものです(同4条1項)。また他に扶養義務者による扶養が可能な場合などは,それを優先して行うものとされています(同4条2項・先ほどの河本さんの事案などはそれに当たります。)。申請があった場合,先ほどの補足性の要件の他,保護を要する状態にあるか否かなどについて福祉事務所が調査し,14日以内に申請を受理するか応答をしなければなりません。
ところで以前日弁連で行った生活保護110番で出た苦情の大半は,福祉事務所の対応についてでした。多かった内容は,「扶養義務者に援助して貰いなさい」「所持金がなくなってから来なさい」などであり,またSTVの特集にあったように,生活保護を申請させないようにするという案件もあったと聞いております(これは生活保護法により,申請があれば14日以内に回答する義務を負うためと思われます。)。
もちろんこれらの対応は違法なものが多いのが実情です。例えば「扶養義務者に援助して貰いなさい」という点について,厚生労働省は,民法上扶養義務を負う直系血族等でなくても「過去に・・扶養を受けるなど特別の事情があり,かつ扶養能力があると推測される者」として「相対的扶養義務者」とするとの通達を出しています。しかしかかる者が民法上扶養義務を負わない以上,扶養義務の対象とならないことは明らかです。従って前記発言における「扶養義務者」が「相対的扶養義務者」であるのなら,完全に違法と言えるでしょう。
ただだからといって一概に福祉事務所の対応窓口だけを責めるのはいかがかと思われます。というのは,数年前にあった滝川市の生活保護受給問題など,生活保護費の不正受給に関する問題があるためです。そのため福祉事務所の側としては,当然これらの不正受給に対応するため,法令に基づいた相応の審査を当然にしなければなりません。その上長期的,かつ構造的な不況により,生活保護の申請自体が増加しているのに対し,これを審査する福祉事務所の職員は増加しているとは言えません。私も生活保護のケースワーカーと話すことが何度もありましたが,いずれの職員もどう見てもあり得ないほどの件数を抱えていて,苦労している様子が伺えました。
更に言うのであれば,前記した厚生労働省の通達などからも推測されるとおり,自治体より,むしろ厚生労働省が生活保護費の支出を抑えるように指導している形跡すらあります。その場合現場の福祉事務所は予算上の問題も考えないといけないのです。
もちろん先ほど述べたように,生活保護の要件を充足しているのに,これを言いくるめるような対応をする,若しくは申請をさせないと言うことは違法であり,解決しなければいけない問題で,憲法上の権利である以上予算云々は理由になりません。個別具体的事案によっては,弁護士に相談して生活保護の申請の代理をして貰うのも一つの選択肢でしょう。
ただ最も根本にあるのは,法律に基づいた審査を十分に行うことができない状態を放置し,かつ十分な予算を確保していないという状態にあるのではないでしょうか。