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弁護士ブログ

学校での体罰について


皆様。明けましておめでとうございます。
ブログ更新をサボっていたため,今頃になってのご挨拶で申し訳ありません。
本年もよろしくお願いいたします。

さて新年の初投稿は,最近話題になっている学校での体罰に関して。
これを法律家の視点から取り上げてみようと思います。

ところで皆さん,授業中騒ぎを起こして周りに迷惑を掛ける,部活で常習的に遅刻をする,といった生徒が居た場合,教師が「廊下に立っていなさい!」とか,「グラウンド10周!」とか指導していたという記憶がありませんか?「ドラえもん」当たりだとのび太君がよく先生に言われているあれです。
実は学校教育法11条には「校長及び教員は教育上必要があると認めるときは・・懲戒を加えることが出来る。」と定められており,上記の処分は広い意味でその一環としてなされるものなのです。素行不良な生徒がいても,それを指導できないようでは,学校としての意味がありませんので,当然の規程でしょう。

しかし学校教育法11条には,「但し体罰を加えることはできない」という但し書きがありますので,教育上必要であったとしても体罰を加えることは出来ない,というのが学校教育法の原則となります。

ただ上記した「廊下に立っていなさい!」も「グラウンド10周!」も,生徒に懲罰として身体的な負担を掛けるのですから,広い意味で言えば体罰,といえなくはないかも知れません。例えば「廊下に立っていなさい」も「1日中,トイレに行きたくなっても立っていなさい!」なら立派な体罰です。
逆に「授業が終わるまで立っていなさい!」という程度で体罰,とされたのでは十分な指導も出来ないでしょう。
結局これらを一義的に決めることも現実的には不可能だと思います。

この点東京高裁昭和56年4月1日判決は,前記した学校教育法が禁止する「体罰」を,
「懲戒権の行使として相当と認められる範囲を超えて有形力を行使して生徒の身体を侵害し,あるいは生徒に対して肉体的苦痛を与えること」とした上で,「教育基本法,学校教育法・・に伺える教育原理と教育方針を念頭に置き,更に生徒の年齢,性別,性格,生育過程,身体的状況,非行の内容,懲戒の趣旨,有形力行使の態様と程度,教育的効果,身体的侵害の大小・結果等を総合して社会通念に乗っ取り,結局は各事例ごとに相当の有無を具体的個別的に判定するほかないものと言わざるを得ない」
としています。
難しい表現を使っていますが,要は一般常識に従って,その状況によって判断しましょう,ということです。裁判所も結局事例に応じて,としか言いようがなかったようです。

では今回の桜宮高校の事件のように部活での体罰だったらどうでしょうか。
この点一般論として高校生である程度の判断能力があることや,所詮部活で離脱の自由があること,そう言う教育方針であることを承知の上入部したという事は考慮できるかと思います。
ただ学校教育法が体罰を禁止している以上,いわゆる鉄拳制裁的な体罰を部活の懲戒権として行使した場合,違法の可能性が高いでしょう。またこれが部員の協調性を害する,ということであれば別ですが,部の成績が上がらない,という趣旨の場合は違法の疑いが高いと思います。
桜宮高校の件は,自分は事件当事者ではありませんし,情報もマスコミを通じてはいる程度しかありませんので,どうこう言える立場にはありません。ただ部活で指導をする際,もしくは指導をされる際の参考にしていただけると幸いです。

弁護士:笠原 裕治
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