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弁護士ブログ

サハリンの司法のIT化について


 2月9日に行われた日本裁判官ネットワークが主催するシンポジウム「地域司法とIT裁判所」の中で、私はサハリンの司法のIT化について発表させていただきました。

 北海道弁護士会連合会は20年前よりサハリン州弁護士会の弁護士と交流があり、2年に1回は北海道の弁護士がサハリン州を訪問しています。私も過去3回訪問させていただいておりますが、3回目の訪問時(2011年)でサハリンの裁判所の訪問を行った際、IT化の面では日本が大きく遅れをとっていると感じざるを得ませんでした。私がサハリンの方が進んでいると思った点は次の通りです。

1 情報キオスク
 サハリンの裁判所では、裁判所のロビーや法廷の外にタッチパネル式の掲示板(情報キオスク)が設置されており、事件毎に法廷の場所・当事者・代理人名が表示されますので、それでどの法廷でどのような事件の裁判がなされているか検索することが可能です。また、2010年より、係属中の事件につき全てインターネットで検索可能ともなっています。日本では、裁判所内では法廷の外に張り紙を貼ったり、受付で事件の案内等を行うにとどまり、ITの利用はなされていません。

2 テレビ電話会議システム
 サハリンの裁判所では、法廷内に他の裁判所内の法廷を映し出すモニターが設置されており、「同時裁判」が可能となっています。同時裁判とは、たとえば本来ハバロフスクの高等裁判所で行うべき裁判をサハリンの地方裁判所で別の裁判官が同時に法廷にでること及び当事者がサハリンの法廷にいる形で行うことを条件にしてできる、というものです。遠方の裁判所にはいけないという場合でも近くの裁判所にいく形で裁判を行うことができます。日本では、テレビ電話会議システムは一部裁判所(本庁及び規模の大きい支部)におかれているにとどまり、利用できるのも民事訴訟の証人尋問等限られた場合でしかありません。

3 全判決のインターネット公開
 サハリンの裁判所では、2008年以降言い渡しのあった判決については全てインターネットで公開が義務づけられております。事件の内容・裁判官名で判例検索可能です(ただし利用にあたっては登録が必要となります)。日本では、最高裁のサイト等で限定的にインターネットで公開されているにすぎず、裁判官ですら公刊物に掲載されている判例や訴訟当事者から提出のあった裁判例以外の判決の内容を知ることは困難なのが現状です。


4 主張書面等の電子メールによる提出
 サハリンの裁判所では、訴状・主張書面等について電子メールで提出可能となっています。日本では、書面提出に電子メールを使うことは認められておらず、持参、郵送あるいはファックスの利用による提出を行うことしかできません。
 なおサハリンでは弁護士の側もITを活用しており、裁判所に書面を電子メールで提出するのはもちろんのこと、判例や法律については書籍ではなくインターネット上のデータベースで検索を行って調べていました(法律が改正が多く、書籍では追いつかないためデータベースを利用しているとのことでした)。どの事務所もペーパーレスが徹底されており、紙の事件記録や書籍に囲まれた日本の法律事務所とはかなりの違いがあります。

 サハリンの司法がここまでIT化が進んだのはここ数年のことのようですが、IT化の結果司法の使い勝手は非常に向上していました。日本もIT化を進めない理由は無いと思いますので、司法の使い勝手を良くするため他国に学ぶべきだと思います。特にテレビ電話会議システムを充実させることにより、遠隔地故裁判所を利用できないという地方の悩みは大きく軽減されるはずです。

弁護士:大窪 和久
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