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弁護士ブログ

模擬裁判について


 本年2月16日に、旭川明成高校において旭川弁護士会が主催する模擬裁判があり、そちらに参加させて頂きました。題材となる事件は架空のもので、窃盗の被疑事実につき被告人が「自分が盗んだのではない」として争っている、といったものです。この事件につき模擬裁判を行った後で、高校生がグループに分かれ、被告人が有罪か無罪かにつき評議してもらいました。各グループが評議を行うにあたっては、旭川弁護士会所属の弁護士が法的な面でのアドバイスを行っており、その上で高校生から自由で活発な意見が出され白熱した議論がなされました。

 刑事事件については、逮捕勾留された段階でマスメディアによる実名報道がなされ、逮捕された人間がイコール犯人であるかのような取り扱いがなされているのが現状ですが、当然のことではありますが逮捕された段階では有罪無罪は決まっておらず、刑事裁判の中で判断されて初めてそれが決まります。仮に逮捕勾留された段階 で逮捕された人間が罪を認める供述をしたとの報道がなされてもそれは同じです。無実の人間であっても、密室における取り調べの中で追い詰められて、やって もいない犯罪をやったと自白してしまうことがあることは十分あり得るからです。このブログを書いている時点でも捜査が続けられているパソコン遠隔操作事件 において、全面的な自白をして保護観察処分をうけた未成年の男性が、のちに保護観察取り消し処分とされたことも記憶に新しいところです。この男性が保護観察取り消し処分となったのも、この男性とは別の人物より秘密の暴露(真犯人しか知りえない事情を明らかにすること)を含む電子メールが発送された事実が明らかになったからであり、それがなければ偽りの自白に基づいた裁判所の判断が覆ることはなかっただろうと思われます。現在の捜査では一部を除き録音録画すらなされていない状態で取調がなされており、密室で行われている自白をどこまで信用できるか、という問題がつきまとうのです。

  前記した模擬裁判においては、被告人は否認しておりますので、自白ではなく客観的な証拠から被告人を有罪と認めるだけの証明が検察官によってなされているかどうか検討しなければなりません。高校生の各グループでも意見が分かれ、有罪とした方と無罪とした方がほぼ二分される結果となりました。模擬裁判を通して、 高校生の皆さんに一人の人間を有罪にする刑事裁判の重みを学んでもらったのではないかと思います。

 こうした模擬裁判は、旭川弁護士会だけではなく各地の弁護士会で同様になされています。実施の有無・内容等については各地の弁護士会にお問い合わせください。

弁護士:大窪 和久
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