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弁護士ブログ

弁護士の説明義務~事件の方針を決めるのは誰?


当事務所の大窪弁護士が,先代の奄美ひまわり基金法律事務所所長である高橋広篤弁護士を提訴した事件において,先般最高裁で逆転勝訴判決を得ました。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130416113943.pdf

この事件,ごくかいつまんで言いますと,債務整理事件を受任した高橋弁護士が,業者からいわゆる過払金を回収し,他の債権者に弁済できる資金があったにもかかわらず,依頼者に何らの説明もせず,適切ではない和解案を提示し,合意に至らなかったため,その後「消滅時効を待ちたいと思います」と一方的に通告して放置した,というものです。
消費者金融業者が有する貸金債権の消滅時効が5年であることから,その5年間訴訟等を起こさなければ,債権は時効消滅します。高橋弁護士の手法は,業者が提訴等をしないだろうと決めつけ,「訴訟等をして貰っても構わない」と開き直り,支払いを拒絶するという方法です。もちろんこれが成功して消滅時効が成立すれば依頼者には損はありません。ただこの方法で支払いを拒絶している間,高額な遅延損害金が課されますので,その意味において極めてリスクの多い方法といえるでしょう。

ただここで述べたいことはこの方法の当否ではありません。
問題はこの方法を採るか採らないか,ということを誰が決めるべきか,ということです。
この事件でもそうなのですが,弁護士は,依頼者から弁護士費用を受け取って依頼者の代理人として相手方と交渉をし,訴訟等を行います。代理人となった弁護士は,よほどの事情がなければ,直接相手方に対し責任を負うと言うことはありません。
これに対し依頼者は,弁護士に事件を委任しているとはいえ,その代理人がしたことは,自分に直接効果が帰属します。例えばこの事例であれば,4年11ヶ月後に訴訟を起こされた場合,その期間に相当する遅延損害金を負担するのは弁護士ではなく,依頼者なのです。その依頼者が強制執行を受けたとき「そんなことは弁護士から聞いていない」と言っても全く通じません(現にこの案件では最終的に遅延損害金等を含めた支払いをせざる得なくなりました。)。

もしこの方法を採る上で高橋弁護士がせめて「現在の過払金は○○円,支払わないといけない債務は○○円,弁護士報酬は○○円。時効待ちのリスクは・・」という説明をしていたらどうでしょうか。
そうであれば,依頼者も弁護士に対し「こうしよう」という意見を言うことが出来たでしょうし,もしそれでもあえて時効待ちをしたいなら,依頼者の人生ですので,仕方ないでしょう(まぁ私は適切ではないと思いますが)。

再度繰り返しになりますが,我々弁護士は,他人の事件を扱い,その事件による不利益は我々ではなく依頼者が負担することになります。そのため弁護士職務基本規程36条は,依頼者に対する報告・説明義務を定めているのです。
私としては,この事件を機に,事件によって利益・不利益を受けるのは依頼者であり,弁護士ではないと言うことを自覚していただき,説明義務や報告義務を適切に履行していただきたいと思います。

また本判決の最後には裁判長からのメッセージとして「弁護士の依頼者に対する報告義務及び説明義務については,自治団体である弁護士会が基本規程36条の解釈適用を通じてその内容を明確にしていくことが期待される」とありますが,今後弁護士会においても,依頼者に対する説明義務・報告義務をよりしっかりと指導していただきたいと思います。

弁護士:笠原 裕治
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