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憲法記念日~今何故憲法の改正を?


今日は憲法記念日。今年の憲法記念日は今までにないほど憲法が議論されているのようです。

憲法改正を最も話題にしている自民党の改正案。
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf

確かに現在の日本国憲法は制定されて既に60年以上が経過しており、現在の時代に沿っていない部分があることは否定できません。
例えば「プライバシー権」などはもはや世間一般に定着した言葉ですが、これは日本国憲法に規程がありません。
これは憲法13条に規定のある「幸福追求権」の一環として保障される、と学説上ほぼ確立していますが、明文として定められていません。
その他名誉権、知的財産権、環境権、個人情報保護など憲法上明記するべき人権は多々あります。
従って改正の必要があること自体は否定しません。

ただ憲法を改正すると言うことは言うほど簡単なことではありません。
現在話題となっている96条の問題は後日取り上げますが、それを除いても多々問題があります。
というのは憲法は諸法令の上に立つ最高法規であるためです。

例えば自民党案の24条には「家族は助けあわなければならない」とあり、これは現在の憲法にはない規程です。
ただこれは民法に定めのある扶養義務と関わりますので、ここの「家族」とある文言の解釈次第では民法と抵触します。
憲法98条で憲法は最高法規とされておりますので、もし24条が改正されれば民法を改正することまで検討しなければなりません。
おそらくこれと同様のことは多数発生し、それに沿った様々な法令の改正を検討しなければならないはずです。

しかし今の日本はそんなことをしている場合なのでしょうか。
震災の被害は未だ十分に回復しておらず、特に原発については放置に近い状態で、避難した人たちが自宅に戻る見通しは全く立っていません。
また一部で景気回復と言う話も出ていますが、それはごく一部のところに過ぎず、地方での景気はいっこうに回復する見込みはありません。
年金制度は崩壊し、生活保護などの社会保障も十分に機能しているとはいえません。
それらのことを差し置いて憲法改正が議論される理由というのが全く理解できません。

一部には今の憲法はアメリカ占領下でできたものだから、と言う議論もあるようです。
しかし今の憲法制定の際日本政府の意見はかなり取り入れられております。
それに加え60年以上の長きにわたり日本人はこの憲法を尊重して様々な工夫をして現状にあうようにしてきました。
それをもう少し尊重するべきではないでしょうか。

また現在尖閣諸島や竹島の問題などから9条を改正して、と言う議論もあるようです。
ただ9条を改正してどうしようというのでしょうか。
自衛隊(国防軍というそうですね)を拡充して中国や韓国と戦争ができるようにするのでしょうか?
それが外交上の諸問題の解決になるのでしょうか?
またそのようなことを国民の皆さんは望んでいるのでしょうか。

またどうしてもやりたいなら、何故正面から議論せずに96条の改正などと言う迂遠な方法をとり、正面から国民に改正案をぶつけないのでしょうか。

上記の自民党改憲案を見ましたが正直現在の国民の意向に沿っているとは到底いえないと思います。
国民の権利を制限する条項が多くなっていますし、どこか大日本帝国憲法的なにおいを感じます。

最初に述べたとおり憲法を改正する必要があるかないか、ということであれば、既に60年以上が経過したので改正の必要がないとはいえません。
ただ今何をするべきか、国民にとって何が必要か、ということを考えていただきたいものだと思います。

弁護士:笠原 裕治
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