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ソーシャルゲームの落とし穴


 当事務所では一時期のピークの時期には及ばないものの、現在も多重債務の相談を多く受けます。多重債務の相談の中で相談者の家計状況をお伺いするのですが、その中でここ一年の間にソーシャルゲームに多くのお金を使っている人が何人かありました。一ヶ月あたりの携帯代金が異常に高いので聞いたところ、いずれもソーシャルゲームでの課金を行っていたというのです。

 携帯電話サイト等で遊ぶことのできるソーシャルゲームは、開始する際には無料として門戸を開けていますが、ゲームを進めるにあたり有利となるカード、キャラクター、アイテムを手に入れるには課金を必要とします。しかも、有利なカード等を手に入れるためには単に課金を行えばいいのではなく、いわゆる「ガチャ」「ガシャ」と呼ばれているくじをひき、当たりをひかなければならないシステムを採用していることがほとんどです。こうしたくじをひく為に一回数百円程度の料金がかかりますが、ゲームの目玉となっているようなレアカードをあてるためには確率論上数万円以上の課金を必要とすることが多いです。

 この点、昨年5月に消費者庁が上記くじ引きシステムの一つである「コンプリートガチャ」が景品表示法に抵触するためゲーム会社に運用の見直しを行うよう要請しています。コンプリートガチャとは、例えば六つの決められた当たりカード等をガチャで全て引き当てた場合、目玉となるカードを手に入れることができるというものです。消費者庁によればこれが景品表示法の禁止する「絵合わせ」くじにあたり違法となるということです。この消費者庁の判断を受けてゲーム会社は「コンプリートガチャ」を中止しています。しかしながら、ガチャというくじ引きの手法自体が違法とまで消費者庁は判断しておらず、形を変えて各ゲーム会社は利用者から課金額を引き上げるための工夫(別システムのガチャの導入など)を行っています。

 こうしたくじ引きシステムの問題点としては、有利なカード等を手に入れさせるため多額の課金を必要とさせる一方、携帯電話料金やクレジットカード決済を代金支払い方法として利用させるため、利用者に知らず知らずのうちに高額な負担をさせてしまうところにあると言えます。カード等をネットオークションで販売するといった方法をとらなければ有利なカードを得たところで金銭的な利益はありませんが、それを除けばギャンブルと同様と言っても差し支えないと思います。それにも関わらず、ソーシャルゲームに対する特別な法規制が今のところありません(前記した景品表示法もソーシャルゲームができるずっと前の法律であり、ソーシャルゲームを想定したものではありません)。消費生活センター等にもソーシャルゲームに関する相談(高額の請求をされたというものなど)も相当増えており、ギャンブル同様の射幸性をもったソーシャルゲームがこのまま法規制がなされないままでいいのかは正直疑問があります。

 ソーシャルゲームの課金システムで最も問題になるのが、未成年者の利用についてです。親の携帯電話を使って未成年者が高額の課金を行ったので、親がゲーム会社に契約の取り消しを求めても事業者がこれに応じないというトラブルはよく消費生活センター等に寄せられています。法律上は契約の一方当事者が未成年の場合、法定代理人(親等)の同意の無い場合は取り消すことができることが原則です(民法5条2項)。ところが事業者から「年齢確認の表示はしていたが、子どもが虚偽の年齢を通知している。これは民法21条の「詐術」にあたるから、取り消しは認めない」という反論がなされ、取り消しに応じないケースが多々あります。確かに民法21条は、未成年者でも成年であると欺く行動をして誤信させた場合には契約の取り消しを認めない旨を定めていますが、対面方式の契約ではないソーシャルゲームの場合未成年者が容易に利用してしまうことができる特有の問題がありますので、年齢確認画面の存在のみで一律に詐術にあたるとすることはできないと私は考えます。しかしながら、上記事業者のような対応で泣き寝入りをしている方も多いのではないでしょうか。

 上記のような問題点をふまえ、消費者庁は本年4月にソーシャルゲームに関し、有料課金の状態を随時確認すること、保護者は課金状況を定期的に確認すること、不審な点は消費生活センターに相談することなどの注意喚起を行っています。門戸が広く多くの人が遊ぶ様になったソーシャルゲームですが、利用するにしても落とし穴が大きいことを認識して利用すべきですし、未成年者の利用に関しては特に注意すべきだと思います。

弁護士:大窪 和久
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