弁護士法人道北法律事務所(旭川・名寄)

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弁護士ブログ

弁護士会の地域司法対策について その1


 久々の投稿です(笑)。ホントここしばらくブログ放置でした。怠慢極まりないですね。すいません。

 さて私の役職について自己紹介欄には「法律相談センター運営委員会委員長」とありますが,今年4月から旭川弁護士会の地域司法対策委員会という新設の委員長に就任しております。この地域司法対策委員会というのは,当会管内の弁護士過疎対策全般を担当する委員会になります。
 当会には平成13年まで支部に弁護士がおらず,そのため弁護士過疎対策と言っても現実に動くことのできる人間がいませんでしたので,特段弁護士過疎,特に支部の問題について特段の委員会等は設置しておらず,事実上法律相談センター運営委員会が相談センターの運営との関係で動いたり,公設事務所支援委員会が公設事務所関係で動いたりしておりました。
 ただ平成13年当時と異なり,現在は裁判所支部のいわゆるゼロワン問題は解消され,支部で熱心に活動する弁護士が多数おります。またそのような状況であるにもかかわらず,未だ弁護士に対するアクセス障害は解消されておりません。そのため支部でも積極的に弁護士会として戦略的に活動するため,当委員会が新設されました。

 さて先にお話ししたように私は4月に地域司法対策委員会の委員長に就任し,だいたい8ヶ月が経過しておりますが,何となく思いついたところなどをお話ししたいと思います。

 まず先に言いましたように,地域司法対策委員会は弁護士過疎問題が現在もアクセス障害の形で残っていることを前提に,それを戦略的に解決するために設立された委員会です。
ただよく弁護士の先生方に言われ,また感じるのは
「うちの会には支部のゼロワン問題は解消したから弁護士過疎なんてないよ」
「公設事務所の人に任せておけばいいじゃん」
「別に支部の仕事をやっても儲からないし」
というような話です。

 ただ実際にはどうなのでしょう。

 例えば当会には枝幸郡という地域があります。裁判所の管轄で言えば名寄支部に属しますが,名寄の裁判所とは約90キロの距離があります。
 また鉄道は通っておらず,公共交通機関も一部バスを除きほとんどありません。冬期は地吹雪があるので大変です。
 またこの枝幸郡に最も近い法律事務所は名寄の他紋別・稚内があります。しかしいずれの法律事務所も概ね100キロの距離があります。
 若くて身軽な人ならいいですが,高齢者や子供を抱えた母子家庭の人などは大変です。事実上法律相談ができない,といってもいいでしょう。
 そのためかこの地域の人の中にはオレオレ詐欺に引っかかる人もいますし,DVの被害に遭っている人も多いです。

 更に問題なのはそのような環境なので,地元の人で弁護士を使ったことのある人がほとんどいない,という点です。
 例えば子供にはさみを使わせる時,当然はさみの使い方を教えます。
 それは弁護士も同じで,弁護士がどのような時に役に立つのか,どのようなことをしてくれるのか,費用はどのくらいなのか,ということが分からなければ使いようがありません。
 ところがこれまで弁護士がいませんでしたし,名寄や紋別に事務所ができたのもここ10年のことでしかありません。
 まして弁護士というと「とっつきにくい」「費用とかたくさん取られそう」「敷居が高い」とよく言われますのでなおさらです。
 また地方の人の中には「弁護士さんに頼むような事件を持っていること自体世間様に対して恥ずかしい」というような古い意識を持っている方もいます。
 そのためか枝幸郡のようなところには,「えっ!」と思うような立派な会社や公共団体ですら,顧問弁護士もなく,頼む弁護士もいない,という状況すらあります。

 ちなみにこのような意識は,枝幸郡のような遠隔地に限らず,旭川近郊の町村部,そればかりか旭川市内の人でもかなりの人が持っています。
 特に高齢者の中にはこのような意識を持っている人がかなり多く,正直「もっと前に相談してくれれば良かったのになぁ」と思うことも日々の業務の中で多々あります。

 ただ旭川であれば市役所無料法律相談もありますし,弁護士会法律相談センターも有り,弁護士もだいたい60人くらいいますから,あとはご本人の意識の持ちよう,と言う考えもあります。
 しかし枝幸ではそうはいきません。
 やはり日本という同じ国である以上,枝幸であっても,名寄であっても,旭川であっても,そして東京であっても同じように法律により保障された権利を行使できるようにするべきです。
 そのために活動してこそ弁護士会というものでしょう。

 一部にはそれは過疎地に住んでいるのだから仕方ないという論調がありますが,人は生まれついた場所は選べませんし,高齢者のように動きたくても動けない人もいます。
 やはり同じ日本,同じ権利が認められるのが当然なのです。
 人数が少なすぎて動けなかったようであれば仕方ないのですが,弁護士の人数も増えて,支部の弁護士も増えた以上,これらのこともしっかりとやっていかないといけません。

(具体的な対策などは次回)

弁護士:笠原 裕治
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