今日は3月11日,あの震災の日からちょうど1年が経過しました。
震災で亡くなられた皆様のご冥福を心よりお祈りすると同時に,現在も震災や原発事故の被害のため苦しんでいる方々に対し,心より今後の幸福をお祈りいたします。
あの時自分は事務所の相談室で依頼者と協議中でしたが,正直北海道北部という震源から非常に遠い地域であったことや,協議に集中していたこともあり,地震があったことすら分かりませんでした。
ただ協議が終わった後千葉県の病院に電話をする用事があったのですが,何故か電話が全く繋がらず・・何故かな?と思って調べたところ,震災があったことを知り,大変な事態となっていたことを知った次第です。
その後テレビ等で見た内容,特に津波の映像などはこの世のものとは思えないものでした。私は震災から約2ヶ月が経過した頃,弁護士会が実施した震災被害者のための法律相談のため,陸前高田に出向きましたが,街があったところには建物が一切なく,ただ瓦礫と水たまりがあっただけでした。先日別の機会に陸前高田に出向いた弁護士から聞いたところでは,瓦礫こそ多少片付いたものの,ただ野原が広がっているだけで復興と言うにはほど遠い状態だそうです。
ただ昨年5月に出向いた際,震災で自宅を失った人が大半であったにもかかわらず,何とか努力していこうとしており,また派遣されたボランティアの人たちも何とかこれを助けようとしておりました。自分がもし被害者だったら,おそらく何もできずただ呆然としているばかりなのでしょうが・・正直被害の甚大さ以上に,これを乗り越えようとする日本人の力,というものに感じ入った次第です。
正直自分は今北海道という遠いところにおりますので,できることは限られておりますが,もし震災の被害者のために何かできることがあれば今後いつでも協力させていただきたいと思います。
先日ブログを開設したのはいいのですが,いざ投稿する,となるとなかなか難しいものでして・・。
今しばらくは適当に投稿させていただきますので,しばらくはご容赦いただければと思います。
さて本日の表題は「弁護士は先生?」としました。
というのは,世間一般に弁護士は,「先生」と言われるのがほぼ定着しております。新人の弁護士でも通常「先生」と言われます。
ただ実際に弁護士,というのは「先生」などと言われるようなものなのでしょうか?
単純に答えるなら「NO」です。世間一般で言われているので,私もついつい「先生」と言われるのを認めてしまっているのですが,正直内心では「先生」とか言われるのが余り好きではありません。
通常「先生」と言われて思い浮かべるのは学校の先生や大学の教授のように人にものを教える人を言うのでしょう。
しかし弁護士は,単に法律上の専門知識を依頼者や相談者の皆様方に提供して,その対価を得る専門職でしかありません。
もっと端的に言うなら「サービス業」の一種と言えるかも知れません(もっとも品位を損なうことや違法行為の助長をしてはならないなど,弁護士として当然あるべき制限はありますが)。
サービス業が「先生」な訳はないですよね。
この点については,弁護士職務基本規程22条にも「弁護士は・・依頼者の意思を尊重して職務を行うものとする」とありますし,受任時においてはインフォームドコンセントに務める義務を負うなど(同29条),会則上明記されております。
誤解を恐れずにいうのであれば,依頼者の方から怖がられたのでは,依頼者の意思を尊重することなどできませんので,まともな業務になるわけがないのです。
従って弁護士に依頼する際,弁護士を「先生」と言って,遠慮して言いたいことも言えずに終わる,というのは望ましくなく,むしろ店で食事を注文するときのように,遠慮なく注文いただければ,と思います。
また「先生」と呼ぶと取っつきにくい,と言うことであれば,「笠原さん」でもいいですし,「弁護士さん」と呼んでいただいても結構です。また自分が怖そうだと思ったら,遠慮なく,言っていただければと思います(偉そうに言っていますが自分も結構短気なところがありまして・・。)。
ただ正直弁護士は専門職ですし,その意味において時折難しいことは難しい,とはっきり言わせていただくことがあります。こちらもそれが仕事の一つですので,その点だけはご容赦いただければと思います。
3月2日に,日本弁護士連合会で「全国支部問題シンポジウム」が開かれました。
これは,日弁連が「支部の機能低下を食い止め、支部において「市民に身近で利用しやく、頼りになる司法」が実現するよう、各地の情勢と改善策について検討することを目的に開催」しているもので,今年で5回目となります。例えば道北地域では旭川市には旭川地方裁判所があり,旭川市周辺に住む人はこの裁判所を使い裁判などすることができますが,旭川から遠方に住む人は旭川地方裁判所の支部を使うことになります(旭川地方裁判所には,稚内,名寄,紋別,留萌の四つの支部があります)。ところが,支部は地方裁判所の本庁と異なり,裁判が出来る期日が限られるであるとか,出来ない事件があるなど様々な制約があります。旭川地方裁判所の各支部は日本の中でも最も制約が厳しい支部で,裁判官が一月に一回三日間の間だけしかいないため,その間にしか裁判を行うことができません。支部と言うよりも,出張所とたとえた方が良いかもしれません。
裁判所の支部は市民が利用しやすい裁判所とは言えないのでは無いかという問題意識のもと,シンポジウムでは各地の抱える問題点について議論がなされました。本年の議論の内容については下記リンク先(ツイッターの投稿内容をまとめたもの)を参照して頂きたいと思いますが,5回のシンポを経ても,裁判所に大きな改善が見られたと言うことはありません。司法試験に合格した人数が増えているにもかかわらず,裁判官の数もほとんど増えてはいません。そもそも日本の司法予算が長年にわたって国家予算全体の0.4%ほどでしか無い状態が続いており(平成23年度は約3200億円であり,来年度は減額が予定されています),その限られた予算の中では人的にも物的にも裁判所を充実させることができないのでしょう。ただ,それでは地方に住んでいる人の「裁判を受ける権利」を守ることにはなりません。
全国支部問題シンポジウム (togetter) http://togetter.com/li/266478
名寄事務所の所長をしている大窪と申します。このたび事務所のサイト及びブログを開設いたしました。最初ですのでまずご挨拶をさせて頂きたいと思います。
私は昨年春より名寄事務所で業務を行っておりますが,経歴にあるとおり北海道で弁護士として業務を行うのは名寄が初めてではありません。2005年から2008年までの3年間はオホーツク海に面した紋別市の法律事務所(紋別ひまわり基金法律事務所)で仕事をさせていただいております。 名寄と同様,紋別は裁判所があるにもかかわらず長年にわたり弁護士が一人もいない街でした。裁判所があるのに弁護士がいない場所をなくすため日本弁護士連合会は各地に「公設事務所」と呼ばれる弁護士を交替で派遣する法律事務所を開設していますが,紋別ひまわり基金法律事務所もその一つです。そこで街にたった一人の弁護士として多数の相談を受け,多数の事件を受任し解決してきました。紋別での仕事を通じ,弁護士がいない地域では一人の弁護士の力がより重要であると考えるようになりました。その後も鹿児島県奄美大島という弁護士が少ない地域で,公設事務所所長として3年間仕事を行ってきました。昨年北海道に戻り名寄で仕事を始めたのも,名寄も未だ市内に弁護士が2名しかおらず,一人の弁護士の力が強く求められているところであると考えたからです。
笠原弁護士の挨拶の通り,道北地域でも弁護士が増えておりますが,弁護士の数が単に地方で増えればいいというものではなく,その場所の弁護士がどのような仕事をするかが問題です。特に弁護士の少ない地域では地域の方が弁護士を選ぶことが難しいので,弁護士の責任は本当に重いものだと思います。
長年全国の弁護士・司法書士と協力して多重債務問題に取り組まれた奄美市役所の禧久孝一さんの著書「奄美の「借金解決」係長」では,弁護士がいない地域における法律専門家のあるべき姿について「たしかにここ数年で,ひまわり基金法律事務所とか,法テラス(日本司法支援センター)の地方事務所など,誰もが気軽に法律相談を受けられる数多くの「場」が,全国に設置されました。ただ,そういった取り組みはまだ緒についたばかり。そこに赴任する弁護士や司法書士に必要な「資質」は,都心部の法律事務所とは異なる部分も多々あります。そこが十分に理解されていないように思うのです」と指摘されています。また,弁護士自身の主張を最後まで押し通さないとプライドが許さない弁護士や,相談者に対して高圧的だったり冷淡だったりする弁護士には「弁護士過疎地域で仕事をして欲しくありません」という厳しい指摘もなされております。私が奄美大島で3年間仕事をしている間には,禧久さんから直接弁護士のあり方についてお話を伺いましたが,本当に耳の痛い指摘ばかりでした。
今後名寄で仕事を行っていくにあたり,より良い法的サービスを提供させて頂くだけではなく,親しみやすい事務所としていきたいと考えております。今後ともよろしくお願いいたします。
本日,旭川弁護士会で,多重債務、労働,離婚,DV,相続,学校の問題,生活困窮などを対象とした無料電話相談を行いました。私も担当者の一人として相談を行いました。これは日本弁護士連合会の『自殺対策強化月間における全国一斉「暮らしとこころの総合相談」』を企画を受けて行われたものです。旭川弁護士会のホームページでの広報(http://kyokuben.or.jp/news.html)だけではなく,新聞で取り上げて頂いたこともあり多くの方の相談があったとのことです。
この相談は一人でも多く自殺で亡くなる方を少なくすることを目的として行ったものです。NPOライフリンク(http://www.lifelink.or.jp/hp/top.html)がつくった自殺対策白書(ホームページ上で公開されています)によると,人が自殺に追い込まれるには借金や家庭内の問題,労働問題,健康問題など数多くの「危機要因」が重なり,連鎖しながら自殺へ結びつく経路を作っていくとのことですが,まさにその通りだと思います。逆に言えばそれぞれの「危機要因」をなくしていくことで自殺への経路をなくしていくことができます。弁護士が全ての問題を解消することはできませんが,行政や他の専門家と協同することにより問題解決の幅を広げていくことはできると思います。
私もこれまで,借金を残されて自殺された方の遺族の相談を受けたことはありますが,借金の問題を生前に解決できていればあるいは自殺という結果に結びつかなかったかも知れないと思い,無念でなりません。今回のような一度の相談に限らず,問題解決手段へのアクセスがより広がらなければならないと思います。