4月27日に枝幸町無料法律相談会の担当者として相談を行ってきました。
これは,旭川弁護士会が今年度からはじめたもので,毎月第4金曜日に旭川弁護士会所属の弁護士が無料で法律相談を受けるというものです。
枝幸町及び近隣の地域は,支部裁判所がある稚内・名寄・紋別のいずれの場所からも遠く,かつ弁護士事務所もないことから,弁護士による法律相談の必要は高いのでは無いかと思います。
来月以降も実施しますので,ご希望の方は旭川弁護士会までお問い合わせください(予約制となっております)。
本年4月より,下記の通り定期的に士別商工会議所にて無料法律相談が行われるようになりました。
1 開催日時
毎月1回(原則として第3週の水曜日(変更することもあります)。第一回目は平成24年4月18日(相談担当野島弁護士)です)
時間:午後1時から午後5時まで・相談者1人あたり相談時間は30分
2 費用等
無料
3 開催場所
士別商工会議所内
4 対象
商工会議所会員、会員家族及び従業員
5 担当弁護士
旭川弁護士会名寄支部所属の弁護士(名寄ひまわり基金法律事務所 田頭理弁護士・弁護士法人木村雅一法律特許事務所 野島梨恵弁護士・弁護士法人道北法律事務所 大窪和久弁護士)の3名が交替で担当
6 予約・問い合わせ窓口
各担当弁護士の所属事務所
名寄ひまわり基金法律事務所 電話 01654-3-7115
弁護士法人木村雅一法律特許事務所 電話 0165-29-7200
弁護士法人道北法律事務所 電話 01654-8-7080
よろしくお願いいたします。
なお,4月以降の予定ですが,5月は5月16日(相談担当大窪弁護士),6月は6月20日(相談担当田頭弁護士)となっております。
先月5日に北海道弁護士会連合会で国士舘大学の中村達也教授をお招きし,国際仲裁についての研修が行われました。
国際仲裁とは,国を超えた紛争につき,第三者である仲裁人が当事者の言い分や証拠に基づき判断をして,紛争を解決する制度のことを言います。この国際仲裁は,例えばロシアの会社と取引をするにあたり,トラブルが生じた場合には問題解決の手段として極めて大きな意味を持ちます。なぜなら,訴訟による解決が困難であるからです。この点,ロシアの会社とのトラブル(例えば,売買代金の不払いがあった場合など)について日本の裁判所で裁判を行い,勝訴判決を得ることができたとしても,日本の裁判所で勝ち取った判決をもとにしてロシアで強制執行をしようとしても,することができません。日本とロシアの間では「相手国の判決を相互に承認する制度は存在しないので,日本における裁判でロシア企業に対する有利な判決あるいは仮処分命令を得たとしても,この判決や命令に基づいて,ロシア国内での相手方の資産差し押さえ等,強制執行は,事実上,不可能」であるからです(2010年3月 独立行政法人日本貿易機構「ロシアにおける契約行為と実務上の留意点」14頁)。一方,国際仲裁により判断を得ることができれば,仲裁判断に国際的通用性が認められているので財産の差し押さえをすることができます。
この国際仲裁をおこなうためには,あらかじめ当事者間で契約で国際仲裁を行う場合の取り決めをすることが必要です。ここで特に注意をしなければならないのが,仲裁を行う場所(仲裁地)や,仲裁を行う際に判断の基礎となる法(準拠法)をきちんと定めておくことです。仲裁地を決めておかなかったが故に,仲裁地が遠く離れた第三国になってしまうというケースもあります。日本を仲裁地にし,日本法を準拠法とすれば紛争が起こった場合に有利になるでしょう。
今後北海道とサハリンなどロシアとの間での商取引はより活発になると思いますが,取引を行うにあたり国際仲裁をどう行うかについてはきちんと取り決めておくことをお勧めいたします。
先週日本弁護士連合会の自殺対策強化月間の一環として,旭川でも「暮らしとこころの総合相談」が実施され,当事務所からも大窪弁護士がこれに参加しました。
詳細は大窪弁護士の投稿をご覧頂ければと思いますが,大窪弁護士が言うように,様々な問題で悩み,不幸な結果に至ると言う事例は我々も多数見てきておりますし,そのような結果が生じる前に改善できるようにする,というのは社会一般にとって必要なことだと思いますので,今後我々としても是非協力していきたいと思います。
ところでこの企画を見たときに思い出したのが,私がかって仕事をしていた名寄市に2007年に精神科クリニックを開いた阿部恵一郎さんが執筆した「精神医療過疎の町から」というという本です。
http://www.yomiuri.co.jp/book/raiten/20120312-OYT8T00750.htm
この本は精神科医が次々と撤退する上川北部地域にあえて精神科クリニックを開業した精神科医のエッセイで,精神科医が不足している上川北部地域における奮闘が掲載されておりますが,その中で阿部医師が市役所や市立病院などと連携してごく自然な形で自殺予防のネットワークを形成し,かつ地域の実情にあったネットワークの形成のために尽力いただいている様子が伺えます。
また地域にごくわずかしかいない精神科医として,地域全般のことを考え,このような活動に尽力いただいていることを考えると,頭が下がる思いです。
この点前記した日弁連主催の「自殺対策強化月間」なども悪くはないのですが,「強化月間」と言われると,つい「だったら他の月はどうするの?」と突っ込みたくなりますし,また中央の考えることはえてして地方ごとの実情を考慮せず,画一的になりがちです。
その点から阿部医師の著作にあるように,恒常的,かつ地域の実情にあったネットワークの形成が必要と強く思いましたし,またこのような企画を我々も独自に企画できると素晴らしいと思いました。
最近せち辛い世の中になっているせいか,各種クレーム処理について相談を受けることが多いですので,今回はクレーム処理について投稿させていただきます。
そもそも「クレーム」とは英語では「単に権利を主張すること」と訳されますが,日本ではいわゆる「苦情」として受け取られること,特に消費者サイドが会社や公共団体などに対して言う苦情,と取られることが多いのが実情です。
もちろん,苦情,が正当な内容であれば,苦情を受けた側もそれ相応の対応をするべきなのは当然のことで,これを後述する「狭い意味でのクレーマー」として,相手にせず処理してしまうべきではありません。当方の姿勢を疑われますし,相手方の感情等をこじらせて,紛争を複雑,長期化させることになりかねないためです。
ただ最近多いのは,相手方の要求に法律上の理由が全くないにもかかわらず,単にクレームをつける,といういわゆる「狭い意味でのクレーマー」です。特にその傾向は地方に行けば行くほど多くなります(例えば滝川市の生活保護費に関する事件などが好例でしょう)。
その理由は,東京等の都会であれば,クレーマー対策マニュアルがある,担当の部署がある,などそれ相応の対策をしているのですが,小さなコミュニティで過ごしてきた地方では,そのような苦情対応に慣れておらず,また相談するべき相手も少ないため,その種の苦情に負けて不当な主張を認めてしまう,という傾向があるためです。またその種の「クレーマー」の苦情は,手を変え品を変え,様々な方法でなされることや,担当者が一方的に責められることから,担当者が鬱病等になることも少なくありません。
従って今後増えていく「狭い意味でのクレーマー」に対し,どのように対処していくか,ということは,どの団体,個人においても考えていく必要のある課題かと思われます。
ただ先ほど説明したように「正当な権利主張」をクレーム扱いしては活動が成り立ちませんし,かえってトラブルを複雑化させることになりかねません。そして「正当な権利」か否かは,最終的には裁判等で決められるものですので,その場で「絶対にこれはクレーマーだ」とは断定できないのが一般です。
また「狭い意味でのクレーマー」も様々なものがあり,例えば暴力団関係者による不当要求のような典型的なクレーマーもあれば,単に感情的になっていて,人の言うことを聞かず,暴走してしまうタイプ,というのもあります。
そのためその場その場で「狭い意味でのクレーマー」か否かを見分けるのはなかなか困難なのですが,一応私の経験上,「狭い意味のクレーマー」の傾向をいくつか挙げてみようと思います。
1.要求が曖昧である。例えば暴力団関係者がいう「誠意を示せ」という言葉などが挙げられます。法的に何らかの要求ができるようなら,「損害賠償として・・」という言葉になるのが通常でしょう。
2.素性不明の第三者を介在させる,人権擁護のような団体の名前を使う等の場合。例えば「暴力団の人間を二人行かせるからな」「某人権団体に話して貰うことにする」「東京の弁護士に相談したら・・」等々です。弁護士以外の「代理人」が交渉を行うのは弁護士法に違反する可能性が高いと思われます。また弁護士に依頼・相談するのは正当な権利ですが,その場合法律に従った紛争の解決が期待できますので,それを待って対処すればいいでしょう。
3.執拗であること,もしくは迷惑をかけることを行うこと(例えば窓口に居座る)など担当者に心理的圧迫を加えることを行う。このような対応をされると対応した担当者が圧力を受け,トラブル回避のためついつい要求を受け入れてしまうことがありますが,これは「狭い意味でのクレーマー」の典型的手口です。
4.事情を知らない他の部署に話を持ち込むなど,事情を分からない人を巻き込む。事情を知らない人が一方的に話を聞けば,通常その人に同情するものです。それを利用して不当な要求をする,と言う手口も結構ありがちです。
5.法的な主張と道義的な責任をまぜこぜにする,揚げ足を取る,自分では文書を書かないが相手にだけは要求するなど,の傾向が挙げられます。
その他様々なポイントがあるのですが,もし上記のような傾向がありましたら,「狭い意味でのクレーマー」ということを疑ってみても良いのではないかと思います。もちろん適正なクレームには応じなければなりませんし,あからさまにクレーマー扱いするのはかえって紛争を大きくすることに繋がるので避けないといけないのですが,「狭い意味でのクレーマー」の要求に一度応じると,かさにかかって更に強い要求を持ち出すことがあります。
もし「狭い意味でのクレーマー」と疑われるような事情があった場合,弁護士に相談することをお勧めします。
では,その対策は?という点ですが,文章が長くなったので,また次回(近く更新予定です。)。