弁護士法人道北法律事務所(旭川・名寄)

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弁護士ブログ

2012年

生活保護制度について


 先日STVで生活保護制度の特集があったことや,お笑い芸人の河本さんの母親の件についてマスコミが取り上げたことなどから,生活保護制度の話題が結構出てきておりますので,今回は生活保護制度について。
 生活保護は,憲法25条に定める生存権の確保のため,国が生活に困窮する国民のために生活を保障することを目的とします(生活保護法1条)。ただ生活保護は,他に利用しうる資産,能力その他のものを活用することを要件とし,あくまで補足的に行われるものです(同4条1項)。また他に扶養義務者による扶養が可能な場合などは,それを優先して行うものとされています(同4条2項・先ほどの河本さんの事案などはそれに当たります。)。申請があった場合,先ほどの補足性の要件の他,保護を要する状態にあるか否かなどについて福祉事務所が調査し,14日以内に申請を受理するか応答をしなければなりません。
 ところで以前日弁連で行った生活保護110番で出た苦情の大半は,福祉事務所の対応についてでした。多かった内容は,「扶養義務者に援助して貰いなさい」「所持金がなくなってから来なさい」などであり,またSTVの特集にあったように,生活保護を申請させないようにするという案件もあったと聞いております(これは生活保護法により,申請があれば14日以内に回答する義務を負うためと思われます。)。
 もちろんこれらの対応は違法なものが多いのが実情です。例えば「扶養義務者に援助して貰いなさい」という点について,厚生労働省は,民法上扶養義務を負う直系血族等でなくても「過去に・・扶養を受けるなど特別の事情があり,かつ扶養能力があると推測される者」として「相対的扶養義務者」とするとの通達を出しています。しかしかかる者が民法上扶養義務を負わない以上,扶養義務の対象とならないことは明らかです。従って前記発言における「扶養義務者」が「相対的扶養義務者」であるのなら,完全に違法と言えるでしょう。
 ただだからといって一概に福祉事務所の対応窓口だけを責めるのはいかがかと思われます。というのは,数年前にあった滝川市の生活保護受給問題など,生活保護費の不正受給に関する問題があるためです。そのため福祉事務所の側としては,当然これらの不正受給に対応するため,法令に基づいた相応の審査を当然にしなければなりません。その上長期的,かつ構造的な不況により,生活保護の申請自体が増加しているのに対し,これを審査する福祉事務所の職員は増加しているとは言えません。私も生活保護のケースワーカーと話すことが何度もありましたが,いずれの職員もどう見てもあり得ないほどの件数を抱えていて,苦労している様子が伺えました。
 更に言うのであれば,前記した厚生労働省の通達などからも推測されるとおり,自治体より,むしろ厚生労働省が生活保護費の支出を抑えるように指導している形跡すらあります。その場合現場の福祉事務所は予算上の問題も考えないといけないのです。
 もちろん先ほど述べたように,生活保護の要件を充足しているのに,これを言いくるめるような対応をする,若しくは申請をさせないと言うことは違法であり,解決しなければいけない問題で,憲法上の権利である以上予算云々は理由になりません。個別具体的事案によっては,弁護士に相談して生活保護の申請の代理をして貰うのも一つの選択肢でしょう。
 ただ最も根本にあるのは,法律に基づいた審査を十分に行うことができない状態を放置し,かつ十分な予算を確保していないという状態にあるのではないでしょうか。

弁護士:笠原 裕治

クレーム処理について(2)


 さて今回も前回に引き続き,クレーム処理について。
 前回ではクレームか否か,の判断について投稿しましたが,今回はクレーム,と判断された場合に,どのように対応するべきか,というところについて説明させていただきます。

 まず最も大事なことは,自らがどのような立場に立つのか,ということを明確にすることです。
 前回の投稿にもありますが,客観的に何が真実か,ということは神様でもない限り分かりませんし,争いがあれば最終的には裁判等で確定する,と言うことにしかなりません。
 従ってクレームを受ける側は,「もしかしたら相手の行っていることが正しいかも知れないな」と思ってしまうものですし(特にクレームを受け慣れていない人などはそう思ってしまいます。),そのような自信なさげな対応が相手方のつけいるスキとなってしまいます。
 そのようなスキを与えないようにするには,まず自分の対応に自信を持つこと,一貫して動かすべきことでないことを持つことです。
 例えば「欠陥商品だ!」というクレームであれば,本当に欠陥があるのかをしっかり調査して,「ない!」ということに自信を持って対応することです。また「欠陥がある」というのであれば,どの程度の損害が相当なのか,ということを調査して対応するべきです。
 なお道義的責任と法的責任は別ですので,法的責任を負うか,ということについて専門家の意見を聞くことをお勧めします。専門家の意見があれば,自分たちの対応に自信を持つことができます。

 次にむやみに責任を認めないことです。クレームをあまりに長く受けていると,多少相手方に同情する,若しくは苦情対応に疲れて認めてしまう,と言うことがあります。
 しかしこれは絶対に禁物です。道義的に同情できたとしても法的な責任は別の問題ですし,まして対応に疲れて,というのは将に相手方の思うつぼと言っていいでしょう(後者の対策は次項)。

 次に相手方の圧迫に屈しない態勢を作ることです。
 クレーム処理は面倒なものです。ですから嫌なことはやらないようにしよう,と思って,つい一人に任せきり,と言うことがあります。
 しかし一人で苦情を聞いていると大変です。暴力団のような確信犯的なタイプであれば相手を追い込むすべも知っておりますし,単に感情的になっている人を相手にするのも大変です。この種の苦情対応で鬱病に罹患する事例もかなり多く存在します。
 そこで対応する際には,可能な限り複数の人間で対応する,ということが大切です。これは担当者の心理的負担を軽減する効果もありますが,脅迫等の言動があった場合に,証人とすることができる,と言う効果もあります。
 またあまりに脅迫めいたことを行ってくるようであれば録音する,という選択もあります。相手方は,録音機が目の前にあると言うだけで発言には気をつけるものです。
 それとその場で回答せずに後日検討の上回答する,と言う対応も大切です。またその場で回答しないよう,決裁権のある人を前面に出さないこと(揚げ足を取られないようにする),というのも大切です。

 それから対応窓口を一本化させること,相手方についても複数の窓口を作らせないことです。
 例えば当方の対応窓口をA課としたなら,そこだけで対応する,ということです。苦情を言う側は当方が受け入れないと,別の部署(例えばB課)に持ち込んで,同じようなことを言う,ということがあります。その場合B課はA課の事情を知らないので,うっかり変なことを回答し,揚げ足を取られます。
 逆に相手方についても,窓口を一本化させることです。例えば「代理人」と名乗る人がいたら,可能な限り排除した方がよいでしょう。この「代理人」がどういう素性の人か分からないことに加え,間に人を通すことによって,誤った情報が双方当事者に伝えられる可能性があるためです。
 紛争を複雑化させないためには,可能な限りシンプルに,というのが基本です。

 その他様々な対応方法があります。
 例えば脅迫等があれば警察の暴力団関係の部署や弁護士に相談して刑事告訴を検討する,感情的な人に対しては民事調停などの利用を検討する,等です。
 ただこれらについては,事案に応じて様々な方法がありますので,弁護士その他にご相談されることをお勧めします。

弁護士:笠原 裕治

クレーム処理について


 最近せち辛い世の中になっているせいか,各種クレーム処理について相談を受けることが多いですので,今回はクレーム処理について投稿させていただきます。

 そもそも「クレーム」とは英語では「単に権利を主張すること」と訳されますが,日本ではいわゆる「苦情」として受け取られること,特に消費者サイドが会社や公共団体などに対して言う苦情,と取られることが多いのが実情です。
 もちろん,苦情,が正当な内容であれば,苦情を受けた側もそれ相応の対応をするべきなのは当然のことで,これを後述する「狭い意味でのクレーマー」として,相手にせず処理してしまうべきではありません。当方の姿勢を疑われますし,相手方の感情等をこじらせて,紛争を複雑,長期化させることになりかねないためです。
 ただ最近多いのは,相手方の要求に法律上の理由が全くないにもかかわらず,単にクレームをつける,といういわゆる「狭い意味でのクレーマー」です。特にその傾向は地方に行けば行くほど多くなります(例えば滝川市の生活保護費に関する事件などが好例でしょう)。
 その理由は,東京等の都会であれば,クレーマー対策マニュアルがある,担当の部署がある,などそれ相応の対策をしているのですが,小さなコミュニティで過ごしてきた地方では,そのような苦情対応に慣れておらず,また相談するべき相手も少ないため,その種の苦情に負けて不当な主張を認めてしまう,という傾向があるためです。またその種の「クレーマー」の苦情は,手を変え品を変え,様々な方法でなされることや,担当者が一方的に責められることから,担当者が鬱病等になることも少なくありません。
 従って今後増えていく「狭い意味でのクレーマー」に対し,どのように対処していくか,ということは,どの団体,個人においても考えていく必要のある課題かと思われます。

 ただ先ほど説明したように「正当な権利主張」をクレーム扱いしては活動が成り立ちませんし,かえってトラブルを複雑化させることになりかねません。そして「正当な権利」か否かは,最終的には裁判等で決められるものですので,その場で「絶対にこれはクレーマーだ」とは断定できないのが一般です。
 また「狭い意味でのクレーマー」も様々なものがあり,例えば暴力団関係者による不当要求のような典型的なクレーマーもあれば,単に感情的になっていて,人の言うことを聞かず,暴走してしまうタイプ,というのもあります。
 そのためその場その場で「狭い意味でのクレーマー」か否かを見分けるのはなかなか困難なのですが,一応私の経験上,「狭い意味のクレーマー」の傾向をいくつか挙げてみようと思います。 

1.要求が曖昧である。例えば暴力団関係者がいう「誠意を示せ」という言葉などが挙げられます。法的に何らかの要求ができるようなら,「損害賠償として・・」という言葉になるのが通常でしょう。
2.素性不明の第三者を介在させる,人権擁護のような団体の名前を使う等の場合。例えば「暴力団の人間を二人行かせるからな」「某人権団体に話して貰うことにする」「東京の弁護士に相談したら・・」等々です。弁護士以外の「代理人」が交渉を行うのは弁護士法に違反する可能性が高いと思われます。また弁護士に依頼・相談するのは正当な権利ですが,その場合法律に従った紛争の解決が期待できますので,それを待って対処すればいいでしょう。
3.執拗であること,もしくは迷惑をかけることを行うこと(例えば窓口に居座る)など担当者に心理的圧迫を加えることを行う。このような対応をされると対応した担当者が圧力を受け,トラブル回避のためついつい要求を受け入れてしまうことがありますが,これは「狭い意味でのクレーマー」の典型的手口です。
4.事情を知らない他の部署に話を持ち込むなど,事情を分からない人を巻き込む。事情を知らない人が一方的に話を聞けば,通常その人に同情するものです。それを利用して不当な要求をする,と言う手口も結構ありがちです。
5.法的な主張と道義的な責任をまぜこぜにする,揚げ足を取る,自分では文書を書かないが相手にだけは要求するなど,の傾向が挙げられます。

 その他様々なポイントがあるのですが,もし上記のような傾向がありましたら,「狭い意味でのクレーマー」ということを疑ってみても良いのではないかと思います。もちろん適正なクレームには応じなければなりませんし,あからさまにクレーマー扱いするのはかえって紛争を大きくすることに繋がるので避けないといけないのですが,「狭い意味でのクレーマー」の要求に一度応じると,かさにかかって更に強い要求を持ち出すことがあります。
 もし「狭い意味でのクレーマー」と疑われるような事情があった場合,弁護士に相談することをお勧めします。

 では,その対策は?という点ですが,文章が長くなったので,また次回(近く更新予定です。)。

弁護士:笠原 裕治

枝幸町無料法律相談会について


4月27日に枝幸町無料法律相談会の担当者として相談を行ってきました。

これは,旭川弁護士会が今年度からはじめたもので,毎月第4金曜日に旭川弁護士会所属の弁護士が無料で法律相談を受けるというものです。

枝幸町及び近隣の地域は,支部裁判所がある稚内・名寄・紋別のいずれの場所からも遠く,かつ弁護士事務所もないことから,弁護士による法律相談の必要は高いのでは無いかと思います。

来月以降も実施しますので,ご希望の方は旭川弁護士会までお問い合わせください(予約制となっております)。

弁護士:大窪 和久

士別商工会議所 無料法律相談について


本年4月より,下記の通り定期的に士別商工会議所にて無料法律相談が行われるようになりました。

士別商工会議所の案内ページ

 

1 開催日時

毎月1回(原則として第3週の水曜日(変更することもあります)。第一回目は平成24年4月18日(相談担当野島弁護士)です)

時間:午後1時から午後5時まで・相談者1人あたり相談時間は30分

2 費用等

無料

3 開催場所

士別商工会議所内

4 対象

商工会議所会員、会員家族及び従業員

5 担当弁護士

旭川弁護士会名寄支部所属の弁護士(名寄ひまわり基金法律事務所 田頭理弁護士・弁護士法人木村雅一法律特許事務所 野島梨恵弁護士・弁護士法人道北法律事務所 大窪和久弁護士)の3名が交替で担当

6 予約・問い合わせ窓口

各担当弁護士の所属事務所

名寄ひまわり基金法律事務所 電話 01654-3-7115

弁護士法人木村雅一法律特許事務所 電話 0165-29-7200

弁護士法人道北法律事務所 電話 01654-8-7080

 

よろしくお願いいたします。

なお,4月以降の予定ですが,5月は5月16日(相談担当大窪弁護士),6月は6月20日(相談担当田頭弁護士)となっております。

弁護士:大窪 和久
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